本田 幹子
(二世)

志発島しぼつとう相泊あいどまり
昭和32年生まれ
 私は北方四島で小さな島が集まる歯舞群島
の元島民二世で、仕事は根室でテレビニュー
スのカメラマンをしています。
 根室は北海道の東の端の小さな町ですが、
領土問題を抱えているため、ロシアによる漁
船の拿捕、大臣や官僚の領土視察、そしてビ
ザなし交流や自由訪問・北方墓参など全国レ
ベルのニュースが非常に多いところです。私
も元島民や大臣などにインタビュー取材など
をすることが多く、返還運動を続ける一方で、
領土問題や返還運動の現場をずっと見続けて
きました。
 根室には、千島連盟の他に、各島の元島民
で組織される“島民の会”が多数あります。
私は志発島の島民で作る「志発会」と「志発
島西前会」という二つの会の二世で構成され
る「志発島青年部」の事務局もしています。
 ビザなし交流に参加させていただいていま
すが、領土問題の進展が無い中で、最近では
「参加者が観光気分では」とか「受け入れる
ロシア人を沖縄や京都にまで連れて行く必要
があるのか」などいろいろな声が出ています。
 しかし、現在四島に住んでいるロシア人は、
島を占拠に来た兵士でもありませんし、とて
も友好的で親切な人達です。今では彼らにと
っても、領土問題は「自分たちの住む場所を
失うかもしれない」という大問題なのです。
それでも、私たちがビザなしで島を訪ね、ホ
ームステイやビジットで交流する時にはとて
も温かく歓迎してくれます。元島民などは、
「何とか早く自分たちの島を返してほしい」
という思いから、対話集会などで「島を返し
て」と発言することもあります。でも、そん
な時は大抵「それはお互いの政府が決めるこ
と」とかわされてしまいます。確かに外交政
策としては、毅然とした態度で主張しなけれ
ばならないのですが、私たち民間レベルでは、
交流を通じ信頼関係を深めることが一番大切
なのだと思います。
 北方領土は素晴らしい漁場で、かつて根室
は北海道の三大都市の一つでした。それが四
島をロシアに不法占拠され、 200海里の漁業
規制で目の前の海も取り上げられ、町はどん
どん寂れていきます。現在、全国にいる元島
民は平均年齢76歳を超え、年々他界する人が
多くなっています。何とかみなさんを生きて
いるうちに自由に島へ行かせたいと願ってい
ますが、領土交渉の先は見えてきません。
 何よりも国には強力な外交交渉をお願いし
ながら、私も二世として、そして地元として
出来ることを続けて、領土問題の解決に少し
でもプラスになればと思い、これからも返還
運動を続けます。